2014/08/04 【お墓博士の一言】
作家というと気難しいとか偏屈といったイメージがちょっとありますが、阿刀田先生はとても穏やかで
気さくな先生でした。先生の著書は数多く、ぞくっとくるミステリーやブラックユーモアの短編小説だけ
でも800冊以上書かれていますし、「ギリシャ神話知ってますか」とか「旧約聖書知ってますか」と
いった世界の古典を読みやすく説いた随筆もたくさん書かれています。
実は私、先生の著書を読んだことがなかったのですが、対談するにあたってどんな方なのかを知る
ために急遽買い込んで読み漁ったのですが、読みやすくて引き込まれてしまいました。
日本推理作家賞をとられた「来訪者」やデビュー作の「冷蔵庫より愛をこめて」或いは直木賞をとられ
た「ナポレオン狂」などはおもしろいですよ。ぜひご一読をお奨めします。
対談は会話が弾みました。何故なら先生は国内外の興味ある作家のお墓をかなり訪れておられる
「お墓好き」の先生だったからです。小説に書こうと思った人や興味を持った人のお墓は国内は
もとより、フランスやイタリアやソ連の墓地まで行かれたそうです。
お墓を訪れると、その人やその家の歴史が分かるし、その人の生き様が感じられるとおっしゃってまし
たが、正にお墓とは何かを言い表していると思います。
お墓がないと、死者を思い出す対象が無くなります。その人もその家の歴史も消え去ってしまいます。
お墓があるから、その人や家族の歴史が語り継がれ、亡き人と精神の触れ合いができ、想いを語り、
想いをつなぐことができるのです。
先生は双子の弟さんを1歳で亡くされた為,月命日に来るお坊さんのお経を絶えず聞かされたので、
言葉より先にお経を覚えたと笑っておられましたが、供養の心の篤いご家庭だったんですね。
現在先生は一人でお墓参りに行くことが多いそうです。子供さんが小さいころは、かならず連れて
行かれたそうですが、お子さんが大きくなるにつれて先祖を思う気持ちにギャップがあり、心静かに
ご先祖様と話したいので最近は一人で行かれるそうです。
私も同感ですね。我が家ではお正月、春彼岸、秋彼岸には親父が私にしたように、私も家族全員で
お墓詣りすることを義務づけていますが、考え事や悩み事があった時は一人で行きます。
私はこう思うんだけど反対者が多い、親父だったらどうするだろう…などとお墓に語りかけてきます。
そうすると不思議と考えがまとまりますし、勇気づけられたような気がして気持ちがすっきりします。
ほんとですよ。嘘だと思われたら、ぜひ一度お試しください。
なお、阿刀田先生との対談記事が8月14日号(8月6日発売)の週刊新潮に掲載されますので、ご一読願えたら幸甚の至りです。