2016/04/19 【終活のレシピ】
「終活」という言葉が2012年流行語大賞のトップ10にランクインするなど、人生の終焉をどうするかを考えることは、もはや特別なことではなくなってきました。そんな終活ブームの折り、今一度「葬儀」が果たす役割を振り返ってみませんか。
直葬や家族葬という葬儀の簡素化の流れがある一方で「葬儀」が本来持つ意義を再認識しようという流れも生まれてきています。
<葬儀には社会的な役割がある>
今回は「葬儀」の意味について考えてみましょう。「儀」というと形式的なことが先だってイメージされがちですが、古来「葬儀」そのものに大切な役割がありました。
葬儀には大きくわけて①物理的な役割、②社会的な役割、③心理的な役割、④宗教的・文化的な役割、⑤教育的な役割などがあると言われています。
「物理的な役割」とは、葬儀の原始的な部分、ご遺体をきれいにすることや、納棺、火葬、埋葬などの遺体の処置です。現在は病院や葬儀社など専門家に任せることが多いですが、昔はこれらもすべて遺族の手により葬儀の一部として執り行われていました。
また「社会的な役割」とは、親族や知人、職場、近隣社会などの関係者が「亡くなった」という情報を共有し、確認し、役所への届け出や諸手続、相続の話し合いなどをすることです。これらはいわば感情以前のこととして、身近な人の死に接したときにやらなければならないことです。
<しっかりと弔うことで心の区切りをつける>
そして「心理的な役割」。遺族の深い悲しみや心の痛みは時間の経過だけが解決するものではありません。葬儀をすることで抑制せずに悲しむことができ、人と話すことで悲しみを共有することができます。葬儀で執り行う所作は、遺族がそれらを一つ一つ丁寧に行うことで心を静めていく役割も持っているのです。
そして「宗教的・文化的な役割」。宗教というと堅苦しく感じるかもしれませんが、子供たちに「亡くなった方は星になった」「天に昇った」という説明をすることがあります。これは大人自身が自分に言い聞かせていることでもあります。
宗教、無宗教にかかわらず遺族は「亡くなった方はこの世からあの世へ行かれた」「体は無くなっても魂は無くならない」と思うことで悲しみの淵から心を切り替えていくのです。
そして「教育的役割」。葬儀の場に出席することで、命あるものにはすべて死が訪れると知るとともに、改めて命の大切さを感じることができるのです。
こうした「古くからの葬儀の役割」を今一度振り返ってみると、葬儀は身近な人の死を受け止め、そして乗り超えていくために欠かせない儀礼であり、昔から伝わる人間の知恵そのものだと気付かされます。ぜひ、この機会に本来持つ葬儀の役割を振り返り、ご自身の「自分らしい葬儀」というのを考えられてはいかがでしょうか。