2018/09/05 【カルチャー情報】
9月の声も聞こえ、朝夕の風に秋の気配を感じるようになりましたね。9月第3月曜日は敬老の日として国民の祝日に制定されています。平成14年まで敬老の日は9月15日でしたが、翌15年からハッピーマンデーの一環として、現在のような第3月曜日となりました。
<戦後、老親を慰め老人の知恵を借りようという趣旨から始まった>
昭和22年、兵庫県多可郡野間谷村で9月15日に「敬老会」が開催されたことが敬老の日の始まりとされています。当時の日本はまだ終戦後の混乱期、多くの人々が疲弊しており、また戦場へ子供を送った親たちも大勢いました。こうした親を慰めるとともに、「老人を大切にし、また老人の知恵を借りて村づくりをしよう」という趣旨のもと55歳以上の人を対象に敬老会を開催したそうです。
翌年、昭和23年に制定された「国民の祝日に関する法律」には、残念ながら現在の敬老の日は入っていませんでしたが、野間谷村では9月15日を「としよりの日」として村独自の祝日としました。この趣旨への賛同が全国に広がりを見せ、昭和30年には兵庫県が「としよりの日」を制定。そして昭和41年に国民の祝日として「敬老の日」が制定されたのです。
<故事にゆかりがあり、気候がよく穏やかな秋の日が選ばれる>
なぜ9月15日なのか、という理由は諸説ありますが、まずは野間谷村で定められたとき、農閑期であり気候もよい時期であったということがあります。また古くから伝わる「養老伝説」(親孝行な息子が滝からわき出でる酒で老父を養ったとされる伝説)で、元正天皇がこの滝を訪れ「養老の滝」と名付けたのが9月であったという説、聖徳太子が悲田院(貧しい人や孤児を救う施設)を建立したのが9月15日であったという説などがあります。
おそらくこうした故事ゆかりの日にちであることと、実りの秋に入り、農作業にも少しゆとりができた穏やかな秋の日が選ばれたのでしょう。
<敬老の日は、自分のためのご褒美の日でもあります>
驚くのは当初は「敬老の対象を55歳以上」としていたことです。現在の55歳といえばまだまだ働き盛りですが、昭和22年の日本の平均寿命はなんと男性が50.06歳、女性が53.96歳でした。男性の平均寿命がやっと50歳を超えたのがこの昭和22年だったのです。
男女ともに平均寿命が70歳を超えたのは1971年、大阪万博の翌年です。このあと、ぐんぐんと平均寿命が延びているのはみなさんもご存知のとおりで、今では日本は世界有数の長寿国となりました。現在の日本では何歳からが「老人」という概念も薄くなってきていますね。
「敬老の日」のニュアンスも同様に、当初の「老いた人を労わる」ということから、もっと先の「楽しいこと、好きなことやものに重点を置く」ことに変化してきているようです。
お子さんやお孫さんからのプレゼントは何よりも嬉しいものですが、ご夫婦二人、あるいはお一人でも、この祝日をエンジョイする日にしてみてもよいかもしれません。
少し贅沢なディナーにでかける、日帰り小旅行をする、ちょっとおしゃれな服を買う、など「老」ではなく「生きてきた自分へ」のご褒美の日。シニアの方自身が「自分のために使う楽しい日」として敬老の日を過ごされてはいかがでしょうか?
気候も穏やかになる秋の日を選んで制定された祝日。ぜひ楽しい一日をお過ごしください。