2013/07/26 【終活のレシピ】
平成22年に全面施行された改正臓器移植法、さらには「日本臓器移植ネットワーク」の啓蒙・普及活動により、近年、臓器移植手術が頻繁に行われるようになりました。それでもやはり、移植手術先進国の欧米と比べると、まだまだ発展途上の状態にあります。その背景には倫理観や宗教観といったデリケートな問題があり、賛否両論さまざまな個人の意見があるため、容易に答えを出すことが難しい問題です。
若い世代からシニア世代まで、臓器提供を受ける側、提供する側のどちらの状況も他人事ではありません。そこで今回は、死後の臓器提供について考えてみたいと思います。
臓器提供の条件、脳死とは?
臓器提供の条件に、「脳死後」または「心臓」が停止した死後であること、があります。脳死とは、脳以外の臓器は活動していて、脳の機能のみが完全に停止してしまっている状態を表します。つまり、間もなく死を迎える状態にあるということです。
現在の法律では、臓器移植をする時に限ってこの状態を「人の死」と認めていますが、本来は完全な死亡の状態ではありません。
医療の立場から見れば「死んでいる状態」であっても、宗教や個人の倫理観からすればそこには魂があり、まだ生きている状態とも考えられるのです。
脳死状態は死んでいるのか、生きているのか
脳死状態の患者に、このままの状態で生きていたいかどうかを問うことはできませんし、家族は少しでも生きていて欲しい、死を受け入れがたいと思うことでしょう。
また反対に、移植手術を希望する患者やその家族からすれば、少しでも長く生きたい、生きて欲しいと思う気持ちは同じでしょう。
意識があって、話すことも動くこともできる状態を「生きている」というのであれば、脳死した人はすでに死んでしまった人ということになります。その一方で、例え意識が無くても、脳以外の臓器は機能していて、体に触れれば温かいし血も通っているのだから、眠っているのと同じで生きているとも考えられます。
これはどちらが正しい、間違っているというわけではありません。個人の考え方次第なのです。
臓器提供を決意した場合
もし自分が脳死判定をされた場合、移植された人の中で生き続けられる、誰かの生命を救うことができるのなら、臓器提供をしたいと考える人もいると思います。また逆に、例え脳死判定されても生き続けられる限り生きて欲しい、と家族に希望されて、臓器提供はしないと考えている人もいるでしょう。
その意思を表示するために、「臓器提供意思カード」というものがあります。これは自分が脳死状態または死後に自分の「臓器を提供したい」か「臓器の提供はしたくない」かの意思を書いておくためのカードです。役所や保健所だけでなく、一部のコンビニエンスストアでも無料配布されています。意思が決まっている人は持ち歩くことで意思表示することができますので、普段から携帯することでいつでも意思表示ができます。
臓器提供は自分一人で決められる問題ではなく、残される家族の考え方や気持ちも汲んだ上で、結論を出すべきであると思います。