2014/08/07 【終活のレシピ】
生前葬と聞くと、文字通り、本人が生前に行う疑似的な葬儀というイメージが強いのではないでしょうか。そのため、生前葬の案内状を受け取った友人から「悲しくなるから、あなたの葬儀に出席したくない」と言われることもあります。また、いざ、生前葬への出席を決めた人も、まだ生前葬が一般的でないため、香典の表書きや参列の服装に迷われるのが現状です。今回は「生前葬」について考えてみたいと思います。
生前葬は、葬儀と告別式の関係で理解する
結婚式に結婚式と披露宴があるように、葬儀にも葬儀と告別式があります。生前葬のコンセプトは、この葬儀と告別式の関係に当てはめると自然と明確になります。「生前葬」を考えるとき、通常、葬儀という宗教儀礼に拘る人は、自分の人生にけじめを付けて、人生をリセットしたいという強い希望が表われています。そして、宗教儀礼に拘らず、これまでの人生でお世話になった方々に感謝の気持を伝えること希望される人は、生前の「告別式」が当てはまるでしょう。
水の江瀧子さんが現代の生前葬のモデル
平成5年、昭和の大スターである水の江瀧子さんの生前葬がテレビで放送されましたが、これが現代の生前葬の雛型となっているように思います。水の江さんの生前葬は、第一部を葬儀、第二部を復活祭として、葬儀後、故人が生き返り参加者と交流する形式で行われました。実は、この死と再生という考え方は、「一度死んだことにすると長い生きする」という擬死再生の逆修の信仰にその起源をみることができます。逆修とは、平安時代に貴族から始まった、仏教の功徳を得るために、あらかじめ自分の死後の仏事を存命中に修することです。まさに、超高齢社会を迎え、昔の長寿儀礼が「生前葬」として、現代に蘇ったと言えるでしょう。
生前葬は自由な発想で行なう
最近、市民団体や葬儀社が主催する終活フェアなどで入棺体験が人気ですが、これも擬死再生の儀礼と考えることができます。入棺も奇をてらうものではなく、死生観を育むものとして儀礼化すれば、生前葬の重要な要素になるのではないでしょうか。さらに、自分史の出版、生前に行う形見分け、遺影写真の撮影や肖像画の制作、死装束や骨壺の準備についても同様に考えることができます。そして、生前にお墓をつくったり購入することも、生前葬のよい機会と考えることができます。是非、自由な発想で生前葬を創造的人生の第一歩として考えてみてください。※生前葬の写真は、株式会社公益社(東京本社・大阪本社)の提供です。
写真提供 : 燦ホールディングス㈱ 廣江輝夫様