2013/06/18 【お墓と供養】
映画「お葬式」(1984年公開)は俳優・伊丹十三氏が初めてメガホンをとった作品です。初監督ながら日本アカデミー監督賞・脚本賞をはじめ、キネマ旬報賞日本映画作品賞、毎日映画コンクール監督賞など、各映画賞を総なめにした傑作コメディ作品です。NHKBSで放送された「山田洋次監督が選んだ家族の映画50本」に選ばれ、山田監督絶賛の1本でもあります。
妻である宮本信子の父親が亡くなった際に、葬儀の喪主を伊丹氏が務めたことが、映画誕生のきっかけになりました。お葬式は映画の題材になるとインスピレーションを受け、約一週間で脚本を書き上げたそうです。報知映画賞の受賞式で、伊丹氏は「一生であんなに楽しい30日間はなかった」というコメントを残しています。
映画「お葬式」のあらすじ
主人公は、井上佗助(山崎努)と雨宮千鶴子(宮本信子)の俳優の夫婦。ある日、突然、千鶴子の父・真吉(奥村公延)が亡くなり、佗助は初めてお葬式を出すことになります。初めてのお葬式で勝手が分からず、オロオロ。お坊さんへの心づけの相場も分かりません。別荘では、真吉の兄で、一族の出世頭の正吉が待っており、佗助の進行に小言をグチグチと……。そこへ、佗助の愛人の良子が手伝いに来たと現れます。良子はゴタゴタの中で、佗助を外の林に連れ出し、わがままを言う始末。果たして、佗助と千鶴子は無事告別式を済まることができるのか……!?
世間一般的にお葬式は死者を追悼するセレモニーですが、本作の「お葬式」は死者ではなく、現在生きている人間にスポットを当てています。お葬式は静かに単調な時間が過ぎていくだけと思われがちですが、本作で伊丹監督は、要所要所ではらはらさせたり、ドキッとさせたり、頭を掻きたくなるような恥ずかしい場面を配置していて、観客を飽きさせない見事な構成になっています。
お葬式に集う人間模様を見事に描写
本作はお葬式のHow to本のようだ、と評されることが多く、お葬式を執り行う様子を客観視できます。しかし、映画を見終わった後は、不思議と清々しい余韻が残り、自然と死者を悼む気持ちが伝わってきます。お葬式は、亡くなった人のためだけでなく、これから生きていく人たちにとっても必要な儀式と感じさせてくれます。
また、映画を観れば、自分のお葬式を具体的にイメージできるのではないでしょうか。まだ観ていない人はぜひ一度ご覧ください。